house HoM
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目神山の家
所在地 兵庫県西宮市
主要用途 戸建住宅
階数 地上2階 地下1階
主構造 鉄骨造一部(地下)鉄筋コンクリート造、
ベタ基礎一部連続基礎
敷地面積 415.69m2
建築面積 121.38m2
延床面積 204.07m2
建物高さ 7,206mm
設計 TEO architects : 小澤丈夫 小澤エリ子
構造設計 桃李舎 : 桝田洋子 桑島由美子
設備設計 設備企画AKEDO : 明渡篤
電気設計 長谷川設備設計 : 長谷川正美
照明計画 LIGHT PLAN : 山本博之
施工 山本工務店 : 山本徳文 金原照夫
設計期間 2002年3月-2003年01月
施工期間 2003年2月-2004年06月
(竣工時期は屋上、外構の緑化完了時)
写真撮影 中川敦玲

西宮市の平野部から北の山側にむけて、急な勾配の坂道を上ったところにある、緑豊かな住宅地にたつ個人住宅である。敷地は、北西方向に下がる斜面となっており、谷を越えた先には、六甲山系の自然のパノラマを望むことができる。

施主は、育ち盛りの子供を持つ夫婦で、しっかりとした構造体と、がらんとした開放的な空間をもつ住宅を希望していた。この家族は、今までの数回にわたる引っ越しを通じて、家は家族全員で一緒に住むものという意識をもち、固定した間仕切りで区画された個室を好まず、また将来の家族構成や住み方の変化に応じて、臨機応変に仕切れるようなルーズな空間のあり方を考えていた。

個人が個室に閉じこもるのではなく、家のどこにいてもお互いの気配が感じられるような大きな空間。ただし、均一な空間ではなく、いろいろな方向に奥行きや抜けがあり、自然光、風、外部への眺望など、この敷地の豊かな環境が最大限に取り込まれた多様なバリエーションをもった場が、日常生活に必要なひとつひとつの機能に対応しながら、あちこちに織り込まれているような状態。そのような住宅を施主と共につくろうと考えた。

敷地が斜面の上部で道路に接しているため、近隣では、まず谷側の敷地境界線上に沿って擁壁を建て、敷地を道路と同じレベルで平坦にする造成工事を行ってから、そこに住宅を建てるケースが多く見られる。しかしこの方法には、工事のし易さという点において施工者にとってのメリットはあるが、施主にとっては造成工事に費用がかかる上に、何よりもこの敷地の良さをわざわざ消してしまうデメリットがあるように思われた。斜面の形状を生かして建物をたてることは、建物の内外にバリエーション豊かな空間の展開を生む可能性をもっており、また性能面でも、例えば寝室など静かに休むための空間などを、斜面に半地下の状態で埋めることによって、防音、安定した室内温度など有利になる点も少なくない。このようなことを施主と協議しながら、今回は造成工事を行わず、既存の地形を利用しながら住宅を建てることにした。

斜面に半分埋めれらた地階は、鉄筋コンクリートの壁構造によるシンプルな矩形の箱、1、2階と屋上は、内部に大きな開放空間のとりやすい重量鉄骨によるフレーム構造とし、吹き抜けや、レベルの異なる床面、階段、スロープなどを組み合わせることで、住宅全体の中で、空間の様々なバリエーションを連続的に体験できるような構成とした。また、間仕切りの量を最小限とし、内部建具はすべて木製の引戸とすることで、内部がより開放的になるようにした。

また、施主のがらんとした開放的な空間がほしいという意匠上の希望と、住まい方に対する考え方とが、矛盾なく合致していることを確認した上で、家全体の空気の流れに重きをおいた空調換気の方式を採用した。建物全体を外貼断熱とし、床暖房、床下放熱器、ガスヒートポンプ式空調機、換気扇、大きな開閉部をもつペアガラス入りアルミサッシュなどが、大きな一つの空間の中で有機的に機能するように考えた。また、屋根についても、豊かな屋上空間の利用と断熱性能の向上のために、屋上緑化の対応が可能な屋根荷重と防水方式を採用した。

小澤丈夫、小澤エリ子

©2003 TEO architects